赤外線
赤外線とは、可視光線の赤色より波長が長く(振動数が低い)、電波、マイクロ波より波長の短い電磁波のことを差します。可視光は波長が短くなるにつれて赤→紫と変化し、ついには短波側で可視域を外れたものを紫外線、さらにエックス線、ガンマ線と短くなっていきます。
FTIR分光法
FTIR分光法とはFourier Transform Infrared Spectroscopyの略でフーリエ変換赤外分光法と呼ばれ、1970年代に発展を遂げた分析方法で、化合物分子の赤外線吸収スペクトルを利用して化合物を定性・定量する測定法です。
赤外吸収が起こると赤外光(の光子)のエネルギーが分子に移ります。分子(中の電子)は励起され、高いエネルギー準位に移ります。この他にも与えられたエネルギーは、分子を構成している原子間の振動、回転・並進運動等に使われます。
赤外線の吸収スペクトルは分子の振動に関係しています。分子の運動エネルギーに相当するエネルギーが吸収され、特に赤外線の領域で吸収ピークが現れます。しかしすべての分子が赤外線を吸収するわけではなく、分子が双極子モーメントを持つことが条件となります。これを「赤外に対して活性がある」といいます。
この双極子モーメントを持ちうる場合として
- 化合物分子の電気陰性度の差により恒常的に双極子モーメントを持っている。(このことを永久双極子モーメントを持つという)
- 永久双極子モーメントを持たない分子のうち、振動(反対称的な伸縮振動や変角振動)により双極子モーメントが誘起される、の2種類あります。
(1)の場合のイメージ図
電気陰性度に差がない
(双極子モーメントはない)
電気陰性度に差がある
(双極子モーメントがある)
(1)から明らかなとおり、フッ素分子(F2)・酸素分子(O2)など等核二原子分子やHe、Arなどの単原子分子には双極子モーメントがないため、赤外線は吸収されません。
するとCO2などの分子はどうでしょうか? 異核原子から成る二酸化炭素は炭素を中心に二個の酸素原子が結合しているため、 下図のような対称な伸縮運動では双極子モーメントは発生しないように思われます。
■通常のCO2分子
■対称に縮んだ場合
■対称に伸びた場合
しかし下のイメージを見れば双極子モーメントが誘起されていることがわかります。
■非対称伸縮運動
■変角振動
分子の振動の挙動は原子の大きさや種類で異なるため、赤外吸収ピークも化合物分子毎に固有なものになります。
FT-IR分光法で赤外吸収を調べることで以下のことがわかります
- 分子、イオン、結晶の構造、分配、反応の研究
- 分子の励起状態、反応中間体の研究
- 定性分析、物質の同定
- 定量分析
- 反応プロセスのモニタリング
以上、アイピーシー出版部「実用分光法シリーズ 赤外分光法」尾崎 幸洋 著 参照
FT-IR分析装置もいろいろなメーカーから開発され固体や液体の研究に利用されることが多かったのですが、MIDAC CORPORATIONはガス相に特化してきた珍しい企業です。
同社のFT-IRガス分析計は半導体業界におけるCVD・エッチャー・スクラバーにおけるPFCガスの定量やプロセスモニタリングにおいて確固たる地位を築き上げてきました。ただしガス分析計ということで同業界ではフッ素、酸素、塩素等のモニタリングを期待されることが多いですが、これらの化合物は赤外活性がなく測定できないことを予めご承知ください。
また弊社ではガスクロマトグラフィーとFT-IRを組み合わせる分析方法であるGC-IRブリルセルインターフェース等も取り扱っています。
ご関心のある方はぜひお問い合わせください。
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(1)FTIRとは?
(6)他成分の干渉
(7)FTIRの測定可能波数域
(8)FTIR測定の定量方法